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Impacts of Kuroshio on the annual fluctuation of the glass eel recruitment to Japan

谷口昇志, 岡本千晶, 藤森宏佳, 児玉紗希江, 清水 学 and 箱山 洋

ニホンウナギは漁獲量が大きく減少しており、有効な資源保護の必要性が指摘されている。そのためにはニホンウナギの生態、とりわけ個体群動態に関する知見が不可欠であるが、多くが未解明なまま残されている。ニホンウナギはマリアナ海溝を産卵場とし黒潮に運ばれて日本に到達することから、黒潮が個体群動態に何らかの影響を与えていると想定される。本研究は、日本におけるシラスウナギ加入量の年次変動に注目し、黒潮が与える影響を解明することを目的とした。分析では、養鰻主要9県におけるCPUEベースの加入量変動を目的変数とし、黒潮流量と各県の黒潮離岸距離および各県より西側の地域における黒潮離岸距離を説明変数とする、1977年から1997年にかけての時系列データを使用した。時系列分析では「見せかけの相関」の危険性が指摘されており、それを回避するため、誤差項の系列相関を考慮する一般化最小二乗法を採用した。以上の枠組みのもと、線形混合モデルを用い係数の値を推定しその有意性を検定した。その結果、黒潮流量と加入量には有意な正の相関があることが示された。これは、黒潮の流量が多いと、それだけ多くのシラスウナギが運ばれることを意味しており、海流が加入量を規定することを示したChang et al. (2018) のシミュレーションと整合的である。一方で、各県およびその西側の地域における黒潮離岸距離と加入量との関係から、黒潮の離岸がシラスウナギの接岸を妨げる傾向は検出したものの統計的に有意でなかった。黒潮離岸距離が年次変動の主要因であると積極的に主張する根拠はなく、沿岸の海流の影響を含めたさらなる分析が必要である。

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