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シラスウナギの池入れ量管理:ウナギ減少要因と池入れ上限値

児玉紗希江, 藤森宏佳 and 箱山 洋

ニホンウナギ(Anguilla japonica)の資源量は減少傾向にあり、国際的な資源管理が行われつつある。2014年には日本・中国・韓国・台湾の政府間協議で、各国・地域のシラスウナギの養殖池入れ量の上限を設定することが合意された。これを受けて日本では内水面振興法のもとに池入れ量を21.7トンに制限している。しかし、この制限量の根拠は乏しく、科学的な池入れ上限値の設定が資源管理において求められている。そこで我々は、戦前からのウナギ漁獲統計の時系列データを用いて、(1)池入れ上限値、(2)ウナギ減少要因の2点について検討を行った。(1) 池入れ量上限値については、過去に個体群が「健全」であったころの池入れ量がその根拠となると考え、黄ウナギ漁獲量が長期間高位安定していた時期の池入れ量を推定することで、池入れ上限値を試算した。(2) ウナギの減少が、加入率(出生率)と生残率、どちらの減少が主要な原因であるかを、若齢(シラスウナギ)と高齢(黄ウナギ)の漁獲量時系列を用いて、レスリー行列モデルからの定性的な予測に基づいて検証した。出生率もしくは生残率が十分低下すると個体群は減少するが、黄ウナギ環境悪化等で生残率が低下する場合は若齢の割合が増え、シラス漁獲等で出生率が低下する場合は若齢の割合が減るという予測が立てられる。従って、個体群が減少しているときの若齢と高齢の比の変化から、ウナギ資源の減少の原因が、生残率の減少か、出生率の減少かを判別できる。結果として、若齢と高齢の比(シラス漁獲量/黄ウナギ漁獲量)は減少しており、漁獲量が資源量を反映しているとすれば、出生率の低下 (シラス漁獲の影響等)を示唆する。このことはシラスウナギ採捕量を制限する管理の正当性を支持する。

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