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クローン系統の頻度変化:実験個体群におけるフナの対捕食者形質の変化と生き残り

児玉紗希江 and 箱山 洋

捕食者密度の違いによって、どのように対捕食者戦略が変化し、個体群中の遺伝子頻度の変化を引き起こすのかは興味深い問題である。環境中に捕食者が存在する場合、捕食淘汰や可塑性を経て、対捕食に有利な形質が生き残ることが予測される。この研究では捕食に有利な形質を遺伝と可塑性の観点から調べるため、複数のクローン系統のフナ(Carassius auratus)を、捕食者であるナマズ(Silurus asotus)が存在する池・しない池に導入する実験を行った。体高が水中の魚食性肉食魚に対抗する形質であることに着目して、クローン系統の親は体高が高い/低いものをそれぞれ導入した(繰り返し間での遺伝子型は等しい)。表現型可塑性・選択的捕食により捕食者在処理で体高が高くなると予想されるが、線形混合効果モデルで分析した結果、フナの体高/体長比は捕食者在処理で有意に高くなっていた。体高形質には系統の効果も大きく、室内実験と同様の結果が得られた。各池からサンプリングした個体のAFLP分析でクローン系統の同定を行った結果、捕食者在/不在処理の間で系統間の生残頻度は有意に異なっていた。ある系統は捕食者存在下で有利であり、別の系統は不利であったことが示唆される。このクローン系統間の生残率の違いを、それぞれの形質からも説明できるかについても、統計モデルに基づいて議論する。

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