Home / Talks English

Talk

空間構造のある個体群の動態予測とモデル選択:ウナギ個体群に着目して

箱山 洋, 藤森宏佳 and 児玉紗希江

限られたデータから将来を予測する上で、用いる統計モデルの選択は重要な問題である。絶滅危惧種の保全や水産資源の管理などでは、全体の個体数の変動に主たる関心があるが、その予測には必ずしも現実的で詳細なモデルが優れている訳ではない。例えば、ウナギは海洋での産卵場を共有し、成長期は各地の河川や沿岸域で過ごすことから、その個体群は空間構造を持つが、全体の個体数の変動を予測するのに、モデルに取り入れるべき構造はデータ量に依存して異なってくる。では具体的にはどのモデルがよいのか?ここでは、ウナギを想定した空間構造を考慮したオペレーティングモデル(現実の状況により近い確率モデル)と、空間構造のない近似確率モデルを構築し、あるデータ量に対して、どちらが予測の上で優れているかを検討した:(1) 対応する決定論モデルについて、どのようなパラメータ領域(近似)で動態式が一致もしくは近くなるのかを調べて(モデルアグリゲーション)、(2) 各モデルの最尤推定量を構築し、モンテカルロデータを用いて、AIC(Akaike information criterion)などの近似規準やカルバックライブラー不一致(Kullback-Leibler discrepancy)の直接計算によるモデル選択を行い、近似モデルの予測パフォーマンスを明らかにした。(3)日本全国の河川湖沼における過去50-100年のウナギ(キウナギ)の漁獲量データから、日本全体・地域・県・河川湖沼という4つの複雑さのモデルを用いて、日本全体のキウナギ漁獲量の予測を行った。これらによって、現実的なデータ量に対する予測精度の最も高いモデルを明らかにし、また、限られた予算に対してどの項目を調査し、予測に生かすべきかを判断することができる。結果については、講演で報告する。

Key Words: