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諏訪湖フナ個体群の動態と生活史:生息地間のネットワークに着目して

箱山 洋, 川之辺素一, 小関右介 and 原田祐子

繁殖期に異なる生息地を利用する魚類にとって、生息地間の移動を確保することは個体群が持続的に存続するために重要である。しかし、河川改修によって水生生物の生息地は分断される傾向にあり、施策に対する事前の定量的な影響評価が求められている。環境省地球環境保全等試験研究費・在来淡水魚ネットワーク(平成18-20年度)では、諏訪湖フナ個体群を一つのモデルケースとしてPVA(個体群存続解析)を行い、堰堤などによる水系の分断化の影響を評価しようとしている。今回はPVAの基礎資料として、(1)過去100年の漁獲データから個体群の変動を推定し、そのパターンを生息地の改変などとの対応から考察した。漁獲データは大型・小型個体別となっており、年齢別のモデルを検討することができる。複雑さの異なる幾つかのモデルで推定を行い、予測の観点で優れたモデルを選択した。(2)繁殖期の本湖-河川-水田(農業水路)の移動と生息地利用実態を調べた。湖や河川の護岸や繁殖場となる抽水植物の分布の調査によれば、諏訪湖湖岸の大部分はコンクリート護岸であり、繁殖に適した抽水植物のある場所は限られていた。河川では堰堤によってフナが繁殖地へ遡上できない場所があった。河川ごとの植生、すなわち産卵場の良さにはばらつきがあった。また、5-7月にかけて湖内・河川に設置された5つの四手網からフナ類の漁獲量・努力量・年齢・倍数性・混獲魚種を調べることで、成魚の繁殖期の本湖-河川の生息地利用実態を調査した。結果、繁殖期には大型の高齢個体は湖内に留まって分布し、小型の若齢個体は河川に移動して分布する傾向があった。湖岸に繁殖に適した場所が少ないことを考えると大型個体は繁殖が抑制されている可能性がある。広範囲の水田に稚魚の分布が見られ、水田が稚魚の生育場として貢献することが明らかとなった。

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